「ねじれ解消」だけが焦点か?大手メディアの異常
参院選公示後、巨大メディアが安倍政権と財界の言い分そのままに“「ねじれ国会の解消」が最大の争点だ”と異常な報道を続けています。
本来ならば、マスメディアは、第2次安倍政権への初の審判という位置づけをもつ参院選について、その争点は何かを、時の政権の意向に左右されることなく、有権者に判断材料を提供するのが仕事であるはずです。
安倍政権は原発再稼働と輸出を推進し、「憲法改正」を掲げています。しかし、原発再稼働や輸出に対して、どの世論調査でも6割前後の国民が反対しており、憲法9条改定、96条改定に対しても、どの世論調査でも国民の過半数が反対しています。「『ねじれ』ているのは国民多数の声と自民党政治」(日本共産党の志位和夫委員長)なのです。
ところが、「読売」4日付は「首相 ねじれ解消 意欲」と見出しをたて、同日付夕刊でも「『ねじれ』解消 焦点」。5日付1面トップも「『ねじれ』『経済』攻防」との大見出し。「朝日」5日付も「与党過半数が焦点」と1面トップで報じ、与党議席の行方に有権者の関心を誘導する報道を展開しています。
大手紙と軌を一にするかのようにNHKも4日の「おはよう日本」で「ねじれ解消が争点ですね」と当たり前であるかのように報道しました。
ここには先の総選挙での「第三極」もちあげや「政権の枠組み」報道、議席予測で消費税や原発、TPP、米軍基地などの争点隠しをしたことへの反省はかけらもありません。
巨大メディアが参院選で「ねじれ解消」キャンペーンに走る裏には何があるのか。
一つは、マスメディア研究者の門奈直樹氏が指摘したように、日本新聞協会が新聞への消費税の軽減税率の適用を政府に求めていることと無縁ではありません。大手紙は自民党や公明党に「お願い」する立場にあります。
もう一つは、本紙が繰り返し指摘してきたように、安倍晋三首相が就任以来、マスメディア幹部と会食を重ねてきたことがあります。都議選告示の前々日(6月12日)もNHK解説委員や各紙論説委員が安倍首相と会食していました。
都議選後の6月24日には、日本経団連の米倉弘昌会長が、テレビ局などに行政指導を行う総務省を統括する新藤義孝総務相と会談し、その後、記者団に「ねじれの解消で安定政権ができ、政策を実行に移せる」と強調しました。
自民党と財界が協力して参院選で巨大メディアに「ねじれ国会」キャンペーンをけしかけ、原発や環太平洋連携協定(TPP)、消費税など国政の重要問題を片隅に追いやっている構図が浮かびあがってきます。
自公による「ねじれ解消」の先に何があるのか。それを伝えることこそがメディアの役割ではないでしょうか。(しんぶん赤旗:松田繁郎記者)7月6日号より