憲法改正、国会議員3分の2同意は世界的に高くないハードル
日本国憲法を変える規定(96条) 国会議員総数の3分の2の同意が必要とされその上で国民投票を実施する。これが「世界的にみても異常に高いハードルだ」と改憲派が言っていますが、これは事実に反します。
例えばアメリカでは上院・下院それぞれの3分の2以上の賛成に加えて50州の4分の3から各州別に同意を取り付けて初めて改正されます。
それぞれの国の歴史を反映して様々ですが、多くの国で共通しているのは一般の法律の制定改正よりも厳しい規定が設けられているという事です(表参照)
憲法とは国民が権力を縛る唯一の仕組みです。権力者が判断を誤って暴走することがないよう国民がブレーキをかけるものです。近代の立憲主義では、主権者である国民がその人権を保障するために憲法によって権力を縛るという考えです。その為に時の権力者の都合のいいように憲法をころころ変えることが難しくなっているのです。
「国民投票がある」「一度も改定していないのは日本国憲法だけ」も欺瞞
「国会で発議したとしても国民投票の規定がある」という主張もありますが、国民投票で判定できるのは、国会が発議した改憲案に賛成か反対かだけであって、国民が憲法改定案の内容をかえられるわけではありません。だからこそ国会の発議というのは、十二分にも熟議の結果、ときの政権党だけではなく、野党も含めて国会の圧倒的多数が合意して行う必要があるのです。
「諸外国では改憲が頻繁に行われている、一度の改定されていないのは日本だけで時代に合わなくなっている」という主張もあります。しかし、日本国憲法は世界に先駆けて戦争放棄と共に戦力の不保持、交戦権の否定まで定めた9条をはじめ、基本的人権でも世界に誇れる先駆的な内容を持っています。だからこそ、国民は戦後70年間憲法を改定することを選択しなかったのではないでしょうか。
改憲要件の引き下げのみを先行させた国は一つもない
自民党の真の狙いは9条改定にあります。ですが世論の圧倒的多数は9条改定に反対しています。そこで矛先を96条に変えてきています。時の権力者が自由勝手にやれるために一般法律並みにハードルを下げるというのは憲法の根本精神を否定するもので、憲法が憲法でなくなる「禁じ手」です。まして安倍首相のように、ときの政権がこれを求めるなど本末転倒であり、世界中でも改定要件の引き下げのみを先行させて改憲を行った国は一つもありません。
自民党は自分たちの改憲案に自身がないからハードルを引き下げようとしている
(改憲論者も怒った!96条改定)慶応大学教授 小林節さんの話
私は自衛戦争を認める立場で改憲論者です。しかし、今問題になっている96条改正は、それ以前の問題、憲法を憲法でなくしてしまう問題なのです。
憲法改正の発議を3分の2から過半数にしようというのは憲法を一般の法律のようにしてしまう。憲法は権力者を縛るものです。変えるには法律よりも厳格な手続きが必要だからこそ憲法なのです。その時々の政治の多数派によってクルクル変えさせてはいけない。
権力者たちが憲法の拘束へのいらだちから憲法を憲法でなくし、法律のように変えようというのはぼくの言葉で言えば「邪道」です。大学で言うと「裏口入学」憲法改正のルール以前の悪事ですよ。「憲法改正」ではなく「憲法破壊」。論外です。
諸外国で改憲要件を変えるための憲法改正が行われたという例は聞いたことがありません。自民党が憲法を変えたいなら正々堂々と国会で3分の2の多数を目指すべきだが、改憲要件の緩和からやろうというのは自分たちの改憲案が国民を説得できないからです。(しんぶん赤旗日曜版、4月28日号より抜粋)
2013/5/29