大災害口実に、安倍首相が導入を狙う緊急事態条項の危険
現憲法は大震災に対応できないはウソです
安倍首相は、憲法を改定し「緊急事態条項」を設ける事が「重要だ」と述べ、参議院選の公約に掲げるとも言っています。
その口実は、東日本大震災のような緊急事態になった場合、今の憲法では不十分だから憲法を変えて対応できる仕組みにすると言うものです。
大災害の時に、政府が緊急に対応するのはもちろん大事ですが、ここにはゴマカシと危険な狙いが併せて存在しています。
「既に現憲法で緊急事態に対処する仕組みは作られている」(53条・54条)
今の憲法53条では、緊急事態で新たに法律が必要だという事になれば、臨時国会を開くことが出来るとされています。更に、衆議院が解散されているときでも、参議院だけで緊急集会を開く事も出来、法律の範囲内であれば政府が命令(政令)を出すことも可能だと定められています(54条)
既に、緊急事態に対処する仕組みはいくつもあるのです。
東日本震災の時、喫緊の優先課題に直面したのは国ではなく地方自治体です。原発事故で安定ヨウ素剤の配布指示が一向に国から示されず、自治体に備蓄されていたヨウ素剤が配布されず結局多くの子供が甲状腺に被爆しました。目の前で見ている自治体に権限を強化する事こそ考えるべきであり、憲法の責任にするのはまったくの的外れです。
「真の狙いは国会の上に政府を置き国民を服従させること」
安倍政権は何のために緊急事態条項を作りたいのか。それは自民党改憲草案(2012年)を見ればわかります。そこには緊急事態として真っ先に描かれているのは大震災ではなく外国からの武力攻撃。武力攻撃が起こると首相が「緊急事態宣言」を出すことが出来るとされています。
「宣言」中は、国会を開かなくても政府が法律と同じ効力を持つ命令を出すことが出来、国民はそれに従う義務「服従義務」まで定められています。(草案99条3項)
国民受けしやすい大災害を突破口にして、国権の最高機関たる国会を権力の下に置くことが真の狙いです。戦前の治安維持法は国会議決を経ずに緊急勅令で最高刑が無期懲役から死刑へと厳罰化され権力の弾圧が強化されました。緊急事態宣言は独裁政治へ突き進めるステップです。
しかも国会の承認は事後でも可能としています(98条の2)これでは国会だけに与えられた立法権が内閣も同じ権利を持つ事になります。
衆議院議員の任期延長。永遠の緊急事態も可能
宣言発令時は、衆議院の解散はされません(第99条の4)永遠の緊急事態を作り出す事も可能とされています。