アフガン・イラク帰還自衛隊兵、自殺率3~16倍
派兵自衛官自殺40人、戦地派兵でさらに増加する
アフガン・イラクに派兵された自衛隊自殺者が今年3月末で少なくとも40人に上っています。国民平均に比べて3~16倍、派兵されていない自衛官全体と比べても2~10倍の高割合で自殺者が出ています。
安倍政権は解釈改憲で本格的な「戦地」派兵を進めますが、現場の自衛官をさらに追い詰めることになります。インド洋、イラクに派兵された自衛官の自殺率は自衛隊全体の率を大きく上回っており、命の危険に直面、強い精神的ストレスにさらされる派兵との因果関係は明らかです。
戦場の恐怖とストレスで命を断つ・・・調査すらしない自公政権
自民党政権は01年9月の同時多発テロを契機としたアフガン戦争に、同年11月から海上自衛隊を派兵。海自はインド洋上で米艦船の給油を8年間にわたり実施しました。
防衛省によると、新テロ特措法(補給支援特措法、10年1月失効)によるインド洋への派兵を経験した海上自衛隊の自殺者は現在までに4人です。旧テロ特措法(07年11月失効)で派兵された海上自衛官の自殺者数については当時の文書が残っておらず不明としていますが、07年11月の答弁書で8人が自殺していることを明らかにしています。
米国の先制攻撃で開戦したイラク戦争(2003年)への派兵では、陸上自衛官が20人、航空自衛官が8人の計28人が自殺しています。
自衛官全体の自殺者数は、隊員数22万5千に対して79人、2842人に1人の割合です。全国の自殺者はおよそ4672人に1人です。これに対し、インド洋、イラクに派兵された自衛官の自殺は280人~1362人に1人となっています。
しかも、これらはのべ派兵人数を元に算出したもの、実際は1人の自衛官が数次にわたって派兵されており、実態としての自殺率はさらに高くなります。
なかでも一際高い自殺率がイラクに派兵された陸上、航空自衛隊です。陸自のイラク宿営地付近では迫撃砲やロケット弾とみられる攻撃が十数回に及び、空自が行った米兵などの空輸活動も地上からのミサイル攻撃に狙われながらの任務でした。高い自殺率の背景には、このような戦場での恐怖によるストレスが影響していると考えられます。
また、インド洋上での補給活動にとどまった海自でさえ国民平均の8倍の割合で自殺しています。派兵中の艦内での自殺も発生しています。
数字上の因果関係が明らかなのに、防衛省は一貫して「因果関係はわからない」としています。現在も増え続ける自殺者の存在すら解明しないまま、新たに戦地に自衛官を送り込む閣議決定に一片の正当性もありません。
1日22人が自殺~アメリカに見る、イラク・アフガン帰還兵の実態
アメリカでは、イラクとアフガンの帰還兵は200万人以上います。国防総省に近い研究所によると、うち60万人が戦地で経験した戦闘や破壊の恐怖から心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを患っています。
退役軍人とその家族で作る団体「全米イラク・アフガン帰還兵」によると、1日平均22人以上の退役軍人が自殺。米メディアによると、12年には自殺した現役の米兵数が349人とアフガンでの戦闘で死亡した米兵数を上回るなど、現役・退役軍人の自殺が後を絶ちません。
2014年7月13日 しんぶん赤旗記事を元に作成