戦争する国造りへ「あの手この手」邦人救出を口実に海外派兵
「派兵先にありき」ではなく国際的結束でテロ組織包囲を
過激組織「イスラム国」による日本人殺害事件で安倍内閣は邦人救出のための自衛隊派兵法の整備を急ごうとしています。海外で危険にさらされる邦人の保護は政府の責任ですが、それに乗じた海外での軍事作戦の法整備など許されません。
居留民保護!を口実に侵略戦争を拡大した戦前の時代を蘇らせる
安倍首相は、国会会で「自衛隊の持てる能力を生かし、その救出に対応できるようにすることは国の責任だ」と答弁、現在の自衛隊法では海外で邦人の輸送は出来るが「武器の使用はできない」と強調「たとえ日本人だけが人質になっていて現地の警察や軍に比べてこちらの装備が上回っていても救出ができないのはおかしい」と述べています
しかし、「邦人救出」とは人質をとる勢力を制圧する軍事作戦、人質の生命安全を保証するものではありません。
安倍首相は「イスラム国」対策として後方支援は行わないと述べていますが、それは「政策的にやらない」というだけで憲法上は可能だという立場で、、3日の国会答弁ではついに自衛隊派遣のための憲法改定までいいだしました。次世代の党の議員が自衛隊派遣のための憲法9条の改定を求めたのに対し「自民党はすでに改正案を示している」と答えたものです。自衛隊が他国の領域に一方的に突入し武力を行使すればそれこそ戦争です。「国民の生命と財産を守る」といえばなんでも許されるわけではありません。
改憲への根深い執念
安倍首相が繰り返し口にしている「邦人救出」のための自衛隊派遣自体、独立した国家でなくても「イスラム国」のように国に準じた組織が支配している地域に自衛隊を派遣することは憲法9条が禁止した武力の行使にあたり、どんなに安全保障法制を整備しても、実行できることではありません。「有志連合」による空爆の後方支援も、憲法が禁止する武力の行使と一体となる危険は明らかです。さすがに安倍首相も国会では、準備している安全保障法制を「イスラム国」に適用するのは難しいことや、「有志連合」への後方支援は行わないと答弁しました。
それでも安倍首相が自衛隊派兵などをあきらめてはいないのは明らかで、首相が次世代の党議員の質問に答えたように、一気に憲法そのものを改定してしまえば、それこそ政府を縛る制約がなくなります。安倍首相がただちに憲法9条改定に乗り出そうとしているとまではいえないにしても、首相の改憲への執念を見せつけたことは間違いありません。
安倍首相があげた自民党の「日本国憲法改正草案」は、現在の憲法前文から「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにする」などの文章を削除し、戦争を放棄した9条は「自衛権の発動を妨げるものではない」と明記するものに変え、自衛隊は「国防軍」にするなどというものです。侵略戦争への反省を投げ捨て、日本を全面的に「海外で戦争する国」に変えてしまいます。
安倍首相は憲法改定を「国民の生命と財産を守る任務を全うするためだ」と答弁していますが、「国民を守る」といえばなんでも許されるなら、それこそ世界は「力」の強さがものをいう無法な時代に逆戻りです。かつて日本が戦前の韓国を侵略し無法な「併合」を押し付けたときも、「満州事変」をでっち上げて中国東北部を侵略し15年戦争に突入したときも、口実は日本の居留民や権益を守ることでした。戦争という手段で「国民を守る」などというのは今日の世界に通用するものではありません。
憲法生かした協力こそ
人質となった日本人が殺害されたのに続き、捕らわれていたヨルダン人パイロットの殺害も明らかになるなど、「イスラム国」の蛮行は限度を知りません。いま必要なのは、国際社会の一致した力で「イスラム国」を追い詰め、武装解除と解体に追い込むことです。
軍事的対応に前のめりで、自衛隊派兵を急いでいるとしか見えない安倍政権の態度では、武力行使の応酬にしかなりません。戦争を放棄した憲法を持つ国として、役割を果たすことが求められます。
これまでアメリカはアフガン報復戦争、イラク侵略戦争、リビア空爆などテロ容疑者に対する攻撃を繰り返してきましたが、そのすべての地域で米欧諸国への憎悪を深め、それがテロの口実を作り出しました。日本が一緒になって対テロ戦争に参加する枠組みを整備すべきではありません。
「在外邦人が人質にとられない外交政策で国際的信頼を高めることこそ」
「救出」とは軍事オペに自衛隊が参加することで憲法9条で許されていない。日本がイスラムを攻撃する「十字軍」に参加したと言って日本を敵視しており日本が軍を派遣すれば緊張を高めるだけ。
私自身ペルーで人質とされた経験から尾軍隊の投入になれば救出される可能性は低くなると言える。何より必要なのは現地の言語習慣などに精通した上での交渉。軍だけを派遣しても全く機能しない。 そもそも在外邦人が人質にとられないような外交政策の国際的信頼を高めることが政府の第1の責務で、危険になったら軍隊を派遣するというのは本末転倒だ。
(ペルー大使館で人質となった 元1等書記官 小倉英神奈川大学教授)
しんぶん赤旗記事を基に作成