集団的自衛権で戦争する国造りへ
安倍政権が狙う集団的自衛権の行使は、日本が直接攻撃されなくても同盟国であるアメリカが攻撃されれば日本もその戦争に参加する「戦争する国造り」そのものです。
歴代政権の憲法解釈は、集団的自衛権の行使は「最小限の軍備」なら日本ももてるという自衛隊「合憲」論にせ反しており認められないというものです。
その憲法解釈を変えようなどと言うのは、従来の政府の主張に照らしてみても許されません。それが通用すれば「戦争する国造り」の策動は歯止めがなくなります。
実際に行使されたのは、米国とソ連の侵略干渉
実際行使された多くは「自衛」ではなく、他国への無法な干渉侵略を合法化する口実でした。
最初の実例は旧ソ連によるハンガリー軍事介入。当時、ハンガリーではソ連の干渉に反対し、民主化を求める国民運動が高まりました。これに対しソ連は首都ブタペストに軍を出動させ、多くの市民を犠牲にし弾圧を行い当時のナジ政権を崩壊させました。集団的自衛権を掲げた軍事行動は最初から「自衛」とは全く関係ないものだったのです。
米国による行使の代表例はベトナム戦争です。当時、米国は南ベトナム傀儡政権による要請によるものであり、集団的自衛権の行使に当たると説明していました。しかし、今では北ベトナムから米軍が攻撃を受けたとしたトンキン湾事件が米国による「でっちあげ」だったことが明らかになっています。
国連精神に反する規定
国連憲章では「国連加盟国に対して武力行使が発生した場合には個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」とあります。
ここでいう「個別的自衛権」は自国が攻撃されたときに行使するもの。他国の戦争に参戦するのが「集団的自衛権」です。
この規定は1945年国連憲章を仕上げるために米国が主導して盛り込まれました。もともと国連は軍事同盟ではなく、侵略が発生した際には国連として加盟国が集団で制裁し、対処する仕組みを目指していました(集団安全保障)
しかし、当時ソ連に対抗する軍事同盟結成に向け準備を進めていた米国は、その根拠にするために集団的自衛権の規定を持ち込み、これにソ連も賛成。それぞれの軍事同盟が世界中に張り巡らされました。その結果、国連が目指す「集団安全保障」に真っ向から反する規定となってしまったのです。
自民党元幹部も改憲論者も「反対」「邪道だ」
憲法を解釈で変えようとする安倍政権。その背景には明文憲法改憲路線の行き詰まりがあります。安倍首相のもともとの狙いは9条改憲、しかし国民の支持が得られず今度は改憲発議の要件(96条)改憲を画策、しかしこれに対しても改憲学者の小林節慶大教授や自民党の古賀誠元幹事長らが「憲法を憲法でなくしてしまう」「邪道だ」と厳しく批判。この路線も頓挫しました。
そこで持ち出してきたのが解釈改憲の実施。しかし、このやり方も「法事国家として問題」(山崎元自民党元幹事長)「戦争の怖さを知っている人間のやる事ではない」(前述の古賀氏)世論調査でも反対が過半数を占めるようになりました。
真の目的は…日本が米国と共に海外で戦争できる国にする事
集団的自衛権を求めるキッカケは日本の軍事的役割の拡大を求めるアメリカの要求です。
1990年に勃発した湾岸戦争、当時米国は日本に輸送などの軍事的な任務分担を要求しましたが、海外派兵法案は国民の反対で廃案になりました。
2000年には米国は報告書で「集団的自衛権の行使を禁止している事は同盟への協力を進める制約だ」と公然と行使実行を要求。以降、日本はインド洋やイラクと言った地球規模での派兵に乗り出していきます。
しかし、これらを可能とした派兵法も「武力行使はしてはならない」「戦闘地域であってはならない」と定めていました。この歯止めをなくし、日本を米国と共に海外で戦争する国にする事、これが集団的自衛権の真の狙いです。
2014/5/20