集団的自衛権行使容認 安倍首相記者会見での”ごまかし”
「皆さんのお子さん、お孫さんがいるかもしれない場所で政府が何もできなくてもいいのですか?」5月15日安倍首相が2つのパネルを示して「国民の命を守る」のフレーズを連発しながら集団的自衛権行使の限定容認の検討を指示した際の記者会見での発言です。
しかし、これらの事例はあり得ない事を持ち出して国民を脅し「命を守る」と言いながら「国民の血を流す」事を想定しているものでしかありません。以下検証します。
※以下のパネルはいずれも15日の記者会見に安倍首相が用いたもので首相官邸HPからの抜粋です。
事例① 日本近海で紛争が発生し、邦人を救助・輸送する米艦を防護するため
ここで想定されているのは「朝鮮半島有事」(高村副総裁)です。しかしそうした事態は起こる可能性はほとんどないというのが専門家の共通する味方です。
政府の元内閣官房副長官補を務めた柳沢協二さんも国会の講演で「米艦だけを攻撃と想定するのは非現実的」とし「仮に米艦を本気で攻撃する国があるとすれば、在日米軍も攻撃され日本有事となり個別的自衛権の問題になる(集団的自衛権を発動する必要はない)」と述べています。
ましてや、世界最強の軍事力を誇る米艦に対し、攻撃を仕掛ければどれだけ甚大な報復を受けるでしょうか。そんなリスクを冒してまで米艦を攻撃するバカな国が今の世界で本当にあると思っているのでしょうか?
もし、本気で「国民の命を守る」と言うのなら、民間も活用して日本自身で救出手段を考えるのが先決ではないのでしょうか?
事例② 国連平和維持活動(PKO)での「民間人警護」「他国部隊の駆けつけ警護」
首相は、アジアアフリカで活動する非政府組織(NGO)の日本人にも触れ「彼らが武装集団に攻撃されれも自衛隊が救えない」と訴え、PKOで派遣された自衛隊の武器使用拡大の正当化を訴えました。
仮に、武装集団に襲われる日本人を自衛隊が救うとすれば、NGOらが滞在するいったい何十か国に自衛隊を予め派遣しておかなければならないのでしょうか?
現在、自衛隊が派遣されているのは南スーダンのみです。この国では内戦が激化して、NGO関係者は全て国外に出ています。自衛隊がいても彼らのために活動する事はないのが現状なのです。
首相は自衛隊が他国部隊を警護する点にも触れ、PKO部隊として紛争に関与する姿勢も示しました。自衛隊が参戦すれば、現地の政治勢力(武装勢力)にとって自衛隊が敵となり、日本のNGO関係者にも被害が及びかねません。
こんなあり得もしない事を強調して集団的自衛権行使を容認させようとする政治と、それを応援するだけの大半の大手メディアの元で、戦争する国造りが進められようとしています。
2014/5/19(しんぶん赤旗5月18日記事を基に作成)